大学では学年が上がるとゼミや研究室に配属されることになります。
※一部の学科を除く
理系の場合は研究室ですが、どの研究室に配属されるかは就職先にも大きく影響を与えます。
そこで今回は研究室選びの参考のために、化学系における研究室の種類と特徴について紹介していきます。
※化学研究室の種類では化学の専門用語が多く出てきます。
研究室選びと就職への影響だけ知りたい方は後半までスキップしてください。
この記事はこんな人におすすめ
- これから研究室配属される理系学生
- 大学の研究室がどのようなものか気になる人
- 化学系の研究室にはどのような種類があるのか気になる人
この記事を書いた人
もぐら夫
・夫婦でブログ運営
・国立大院化学系卒
・化学メーカー研究開発員
・2017年から勤務
・大学は有機材料系の研究
・仕事は高分子系の研究
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化学系研究室の種類
有機化学
その名の通り、主に有機化合物に関する研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 新規有機化合物の合成
- 機能有機材料の開発研究
- 有機合成反応の研究
- 天然物の合成
- 有機化合物に無機元素等を導入
有機化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
有機化学研究室の特徴
- 化合物の種類は無限大
- 研究対象の範囲が広い
- 化学メーカーで有機系の知識を使う事は多い
- 拘束時間が長くなりがち
- 実験室は有機溶剤臭がする
有機化学研究室で得た知識は化学企業に入ってからも使う事が多いです(体験談)。
そのためか、学生時代から「有機系の研究室は就職に強い」と言う噂がありました。
実際に、先輩や同期を見ていても若干その傾向はあるように思います。
ただし就職活動の結果は個人の力量が大きく影響するので、ご参考程度に。
一方で、ほとんどの有機化学研究室は拘束時間が長いです。
その理由の一つとして、実験にかかる時間が長くなりがちだからです。
有機化合物は細かい分子設計をする事が可能なため、どうしても反応ステップ数が多くなりがちです。
また、反応時間や精製時間にも多くの時間がかかるため、拘束時間が長くなることは必然的です。
行きたい研究室が有機系の人は事前リサーチしましょう。
無機化学
無機化合物に関する研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 新規無機化合物の合成
- 機能無機材料の開発研究
- 無機合成反応の研究
- 触媒・錯体等に関する研究
- 生物無機の研究
無機化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
無機化学研究室の特徴
- 実験は付きっきりでなくてOKなものが多い
- 分析や解析が主な研究内容
- 実験室で有機溶剤臭がする事は少ない
- 比較的拘束時間は短め
無機化学の研究室は研究内容にもよりますが、原料を混ぜる⇒オーブンで加熱⇒分析という流れで実験する事が多いです。
オーブンで加熱等の間は付きっきりでなくても良いので、別の作業ができる場合があります。
そのため、比較的拘束時間は短くなりがちです。
とはいえ、論文発表会の数を増やされる等で、教授の方針次第では拘束時間の長い研究室になりえます。
どの分野でも言える事ですが、事前リサーチはしっかりしましょう。
高分子化学
高分子に関する研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 新規高分子化合物の重合
- 機能高分子材料の開発研究
- 高分子重合反応の研究(触媒研究含む)
- 高分子加工の研究
- 高分子物性の研究
高分子化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
高分子化学研究室の特徴
- 化学メーカーで高分子系の知識を使う確率が1番高い
- 研究対象の範囲が広い
- 拘束時間が長くなりがち
- 実験室は有機溶剤臭がする
高分子は有機化合物が主骨格である事が多いため、有機化学の研究室と類似した特徴があります。
※Si系等の元素を主鎖に使った、有機無機ハイブリット化合物の研究等もあります
また高分子は最も身近に溢れた化学製品と言えます。
PCやiPhone、スマホ、電子材料、家電、車、雑貨、消耗品と例を挙げればきりがない程たくさんのものに使われています。
言い換えれば、世の中ではそれだけたくさんの高分子を扱った商品が生産されているという事です。
そのため、多くの企業が高分子材料の研究に力を入れています。
その分有機化学分野と同じく、高分子系は就職にも強く、化学企業に入ったら一番使う知識になります。
化学工学
化学工学は簡単に説明すれば、工業的な化学品生産技術に関する研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 反応プロセスの研究
- 環境・エネルギーの研究
- 粉体高額・流体力学等の研究
- 電熱工学・熱力学の研究
化学工学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
化学工学研究室の特徴
- 希少価値の高い人材になれる
- 就職にかなり強い
- 研究はハード
- 物理や数学の知識が求められる
化学工学の一番の特徴は「希少価値の高い人材になれる」ことです。
実は日本では化学工学を専攻できる大学が20校程度しかありません。
その分、化学工学の分かる人材は非常に貴重になり、就職活動では企業がこぞって取りたがります。
一方で、研究がハードな面もあります。
求められる知識も化学だけではなく、物理的な知識が要求されます。
そして、その物理を理解するために大学レベルでの数学が必要になってくるので、習得すべき学問の範囲は広いと言えますね。
生物化学
生物化学はバイオテクノロジーに関する研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 生体内成分の研究
- 生物の特性に関する研究
- 糖鎖等の合成研究
- 微生物の研究
- 電熱工学・熱力学の研究
生物化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
生物化学研究室の特徴
- 実験は時間がかかるものも多い
- 拘束時間が長くなりがち
- 就職が他対比でハードになりがち
生物化学は他の分野とは違い「生命」に関する研究ができるという魅力があります。
しかし、実験は微生物培養のスクリーニングやサンプル調整等で作業に時間がかかりがちです。
さらに、一般的には就職がハードと言われています。
その理由の一つとしては、生物系を専門とした就職先が少ない事が考えられます。
著者の友人では、資生堂やLION、大手食品メーカーに就職した友人もいる一方で、専門とは全く関係のない銀行や公務員になった友人もいます。
(※生物系だからと言って就職できないわけではないので、生物系の人もご安心を。)
物理化学
物理化学は化学反応や現象を物理的に捉える研究を行います。
上述の化学工学と類似した部分も多くあります。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 測定手法の研究
- 測定装置の開発
- 量子力学等の理論研究
- 統計力学・反応速度論等の研究
物理化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
物理化学研究室の特徴
- 研究は測定・データ解析等が多い
- 物理・数学等の知識が求められる
- 分析装置メーカー等への就職が強い
物理化学は材料データを測定し、解析する事で新しい法則や特性を発見するような分野です。
研究内容を理解するのは向き不向きがあるかもしれませんが、難易度が高いです。
著者も講義では物理化学の分野の勉強をしていますが、かなり難しいと感じました。
また研究内容的にも、分析装置のメーカーへの就職が強いケースが多いです。
計算科学
計算化学は化学反応や物質の物理特性を計算によってシミュレーションする研究を行います。
代表的な研究内容は以下等があります。
- 反応に関する計算の研究
- 物性に関する計算の研究
計算化学の研究室の特徴としては下記等が挙げられます。
計算化学研究室の特徴
- 研究はパソコンを使った研究が主になる
- リモートで研究できる場合がある
- パソコンに強くなれる
計算化学の研究では、計算レベルを落とせば、自前のPCでも計算できますが、基本的には高性能なPCを使って物質の動きや物性をシミュレーションします。
また、研究室によってはリモートで研究室にあるを操作して研究を進める事が出来ます。
研究室選びと就職への影響
結論として、研究室がどこになるかで就職には大きく影響します。
もちろん就職活動は個人の力量に大きく影響されますが、その個人の力量を伸ばせるかどうかは研究室に依存するところが大きいです。
またそれだけでなく、専攻した分野の市場の大小で就職のしやすさが大きく変わります。
例えば先述の通り、
・生物化学系は就職がハードになる傾向がある
・化学工学系は就職に強い
等と一般的に言われていますし、著者の周囲の人を見てもその傾向にあります。
(※生物系だからと言って就職できないわけではないので、生物系の人もご安心を。)
その他、研究室(教授)と企業のコネクションの有無等様々なところで研究室選びが就職に影響を与えます。
だからこそ、研究室選びは事前にしっかりリサーチして、後悔がないようにしましょう。
まとめ
今回の記事では化学系の研究室の種類と特徴についてご紹介しました。
化学系には主に下記の研究分野があります。
主な化学系研究分野
- 有機化学
- 無機化学
- 高分子化学
- 化学工学
- 生物化学
- 物理化学
- 計算科学
そして、それぞれの研究分野には特徴があり、どの研究室を選ぶかで就職にも大きな影響を与えます。
そのため、研究室選びは後悔のないように事前リサーチをしっかりしましょう。
最後に改めて就職サイトをご紹介!